====== アービトレーター ===== ====== アービトレーター(Arbitrator)とは ===== **Arbitrator**((仲裁人の意))は、Qubicネットワーク独自の特別な役割で、**676台の[[tag/Computor]](コンセンサスノード)がクォーラムを形成できない場合にのみ介入する「最終的なライブネス(生存性)保証装置」**です。 一般的なブロックチェーンの「バリデータ」や「ガバナンス」とは根本的に異なり、**普段は一切の権限を持たず、ネットワークが異常停止(ストール)したときにだけ一時的に機能する**設計になっています。 ==== Arbitratorの基本スペック(2025年12月現在) ==== ^ 項目 ^ 内容 ^ | 総数 | 49名(固定) | | 選出方法 | 創設者(@AvdiuSazan)が直接指名+コミュニティからの推薦で決定 | | 任期 | 無期限(ただし不正や長期オフラインで交代あり) | | 報酬 | 基本的にゼロ(緊急介入時に少額のインセンティブが発生する場合あり) | | 必要な投票権限 | なし(通常時は投票すらしない) | ==== Arbitratorが持つ権限と持たない権限 ==== ^ できること ^ 絶対にできないこと ^ | ネットワークが完全にストールしたとき、**一時的に次のティックを強制進行**させる | トランザクションを改ざん・追加・削除する | | 緊急時のエポックを再起動させる | クォーラム(451/676)の決定を上書きする | | | 資産を移動させる、スマートコントラクトの状態を変更する | | | 通常運用時に介入する | → Arbitratorは**「真実」を決める存在ではなく、「ネットワークが死なないようにする緊急ボタン」**です。 ==== 実際の介入フロー(極めて稀なケース) ==== - 676台のComputorのうち451台以上が同じ結果を出せない(例:バグ、DDoS、大規模障害) - ティックが連続して進まなくなる(ネットワークストール) - 49名のArbitratorのうち**過半数(25名以上)**が「緊急介入が必要」と判断 - 彼らが署名した特別な「Arbitrator Tick」を送信 - ネットワークがそのティックを**一時的なチェックポイント**として再起動 - 通常のComputorクォーラムが復帰したら即座に権限を失う この仕組みは **BFT([[tag/ビザンチン障害耐性]])の最終防衛線** であり、**51%攻撃や長期分岐を防ぐための保険**です。 ==== なぜ49名なのか? ==== - 49は奇数 → 必ず過半数が決まる - 少なすぎず(1人で支配できない)、多すぎず(合意が困難にならない) - 地理的・所属的に分散(2025年現在、北米・欧州・アジア・南米・オセアニアに分散配置) ==== 他のプロジェクトとの比較 ==== ^ プロジェクト ^ 緊急時の最終決定権者 ^ 中央集権リスク ^ | Bitcoin | なし(開発者・マイナーが実質的に調整) | 高(コア開発者) | | Ethereum | ソーシャルコンセンサス+財団 | 中〜高 | | Solana | バリデータ投票+財団 | 高 | | Cardano | なし(ハードフォークで対応) | 中 | | **Qubic** | **49名のArbitrator(権限極小)** | **極低** | ==== 誤解されやすいポイント ==== - × Arbitrator = 管理者 → **違う**。普段は何もできない。 - × Arbitratorがネットワークを支配している → **違う**。99.9999%の時間は無力。 - × 49名が結託すれば乗っ取れる → **理論上は可能だが、現実的には極めて困難**(世界中に散らばっており、多くは顔も知らない関係) ==== まとめ ==== QubicのArbitratorは、**「最小限の信頼」で「最大のライブネス」を保証する**という究極のトレードオフを実現した存在です。 「完全に信頼不要なシステム」は理論上存在しませんが、 「普段は誰も信頼しなくていい。でも最悪のときにだけ、分散された49人が助けてくれる」 これがQubicが選んだ現実的な分散化の形であり、 **「権力を持たない最終守護者」** という、他に類を見ない設計です。 ``` {{topic>アービトレーター }} {{tag>アービトレーター computer }}