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251007 Aigarth:Qubic の AI アーキテクチャに潜む「三進法のパラドックス」(転載)

1. 連続的な近似 vs 離散的な論理

現代のほとんどの AI システムは、連続的な浮動小数点による近似に依存しています。

  • ニューロンは浮動小数点(float)である。
  • 重みも浮動小数点である。
  • 勾配は最小値に向かってスライドしていく。

これは静的な最適化には機能しますが、継続的で分散された学習においては破綻を招きます。
Aigarth は、全く異なる前提からスタートしています。


2. 三進法状態論理の導入

Aigarth は、離散的な三進法状態論理(Ternary State Logic)の上に構築されています:

  • +1:興奮性 (Excitatory)
  • 0:中立 / 切断 (Neutral / Disconnected)
  • -1:抑制性 (Inhibitory)

これは単なる圧縮ではありません。安定化メカニズムです。
不確実性は、無理に早期解決(近似)されることなく、そのまま保持されます。


3. 「0(中立)」がもたらす絶対的な静寂

浮動小数点システムでは、完全に「切断」されることはありません。極めて微小な値であっても、依然として伝播し続けます。
Aigarth において、中立性は絶対的です。

  • 状態 0 は「接続がない」ことを意味する。
  • 信号は一切通過しない。

これにより、ノイズは蓄積されるのではなく、停止します。


4. 真の「構造的可塑性」の実現

これにより、真の構造的可塑性(Structural Plasticity)が可能になります。
ほとんどの AI はパラメータを調整するだけですが、Aigarth はトポロジー(構造)そのものを修正します:

  • 接続が形成される。
  • 接続が弱まる。
  • 接続が 0 に崩壊(切断)する。
  • 休眠中の構造が、後で再活性化される。

学習は単なる強度の変化ではなく、構造そのものの変化をもたらします。


5. 「致命的な忘却」の緩和

これは、AI の難題である「致命的な忘却(Catastrophic Forgetting)」1)を直接的に緩和します。

  • 勾配(グラディエント)システムは、新しい学習で古い表現を上書きしてしまいます。
  • 新しいタスクは、以前のタスクを破壊的に妨害します。

Aigarth では、知識を「休眠状態」にすることができます。
古い構造は消去されるのではなく、中立(0)として維持されます。記憶は破壊されるのではなく、優雅に減衰(Graceful Decay)していくのです。


6. 決定論という「ハード・コンストレイント(硬い制約)」

ここには強力な制約が存在します。それは「決定論(Determinism)」です。

標準的な浮動小数点演算は再現性がありません。微細な丸め誤差が蓄積し、そのドリフト(乖離)がコンセンサスを破壊します。
対して、三進法の遷移は離散的な整数です。

  • どのようなマシン上でも同一に実行される。
  • 完全に収束する。

7. 実行基盤としての Qubic

Aigarth は、決定論的な実行基盤(基質)を前提としています。Qubic はそれを提供します:

  • 同一の命令パス
  • 同期されたティック(Tick)実行
  • 固定されたスケーリング
  • 乖離(Divergence)に対するゼロ・トレランス

Aigarth は非決定論を補正するのではなく、実行基盤が決定論を強制することに依存しています。


8. 既存フレームワークとの決別

Aigarth が標準的な浮動小数点バックプロパゲーション(誤差逆伝播法)に依存できない理由はここにあります。

制限となっているのは GPU ではありません。GPU は決定論的な整数演算を実行可能です。
制限となっているのは、従来のクラウド AI スタックに共通する、「非決定論的な浮動小数点トレーニング・フレームワーク」なのです。


9. 学習と推論の境界の消滅

Aigarth は、学習(トレーニング)と推論(インファレンス)の分離を排除します。

  • オフライン・フェーズは存在しない。
  • 固定されたチェックポイントも存在しない。
  • リセットの境界もない。

状態は絶えず進化します。すべての入力が学習であり、すべての出力がトポロジーを再形成します。


10. 適応型システムへの最適化

この特性のため、Aigarth は短期間のベンチマークには適していません。

以下のことには最適化されていません

  • プロンプトの応答速度
  • 静的なデータセットの正確性
  • 次のトークンの予測

Aigarth が最適化されているのは、変化する条件下で動作する「長期間稼働する適応型システム」です。


11. 収束の速さより安定性

制御理論の観点から言えば、Aigarth は高速な収束よりも安定性を優先しています。

  • 高速な収束は、脆さ(ブリトルネス)を増大させる。
  • 低速で適応的な収束は、ノイズやドリフトの中でも一貫性を維持する。

これは意図的な設計です。


12. 結論:三進法のパラドックス

三進法のパラドックスはシンプルです。

「システムに『何もしないこと(0)』を許容することで、知能を獲得する」

二進法や連続的なシステムは、常に推測(Guessing)を強制されます。
三進法システムは、不確実性を保持することが許されます。

その「躊躇(Hesitation)」こそが、継続的で分散された決定論的な学習を、そもそも可能にしている唯一の要素なのです。

#AiGarth #Qubic $QUBIC

1)
致命的な忘却(Catastrophic Forgetting)とは、AI(特にニューラルネットワーク)が新しいタスクを学習した際に、以前に学習したタスクの知識を完全に、あるいは急激に失ってしまう現象を指します。人間は新しい言語を学びながら以前覚えた数学の解き方を忘れない「継続学習」が得意ですが、現在のAIにとっては非常に大きな課題となっています。
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